リキッドバイオプシー
血液などの体液を用いて診断や治療法の選択や治療効果の予測などを行う検査を「リキッドバイオプシー」といい、従来の組織生検に比べて体に負担をかけることなく、くり返し行うことができる解析として近年注目されています。組織生検では採取したがん組織の一部の情報しか得られないのに対し、リキッドバイオプシーでは全身での遺伝子変異をリアルタイムに把握することができます。
CPMのリキッドバイオプシー検査では、目的に合わせて「リキッドバイオプシー パネル解析」、「リキッドバイオプシー デジタルPCR」から選択していただけます。「リキッドバイオプシー パネル解析」は、血液中に流れ出したがん由来の遺伝子を検出することで、遺伝子異常を早期に見つけることや、遺伝子異常のタイプにあった治療薬を見つけることができます。「リキッドバイオプシー デジタルPCR」では、特定された遺伝子変異について、変化を継続的にモニタリングすることができます。
この検査でわかること
がんで起きている遺伝子変異の情報と、適切な治療薬
詳細を見る
がんは遺伝子(DNA)の異常によって起こる病気です。どの遺伝子に異常が起きているかは患者さんによって異なり、遺伝子変異のタイプによって、効果のある薬剤も異なることがわかっています。
血液中には、がん細胞から遊離した遺伝子の一部が流れています。このため、血液を使って、この遺伝子の情報を解析することで、がんの存在や、患者さんにあった治療薬を知ることができます。
がんの早期検出とモニタリング
詳細を見る
リキッドバイオプシーによるがん検査は、ごく微量ながんの遺伝子異常を検出できるため、MRIやCTなどの画像診断より早期にがんの兆候を発見できることが報告され、がんの早期診断への応用が期待されています(参考文献:Tang et al., Cell Biosci. 2016;6:32.)。
また、リキッドバイオプシーによって検出される遺伝子異常は、手術や治療などでがんが小さくなると検出頻度の数値が下がり、がんが進行して大きくなると数値が上がる傾向があります。そのため、定期的に検査を行うことで、がんの治療効果やがんの進行をモニタリングすることができます(参考文献:Tie et al., Sci Transl Med. 2016;8:346ra92.)。
リキッドバイオプシー パネル解析
検体(血漿10 mLまたは血液 20 mL)より、がん組織から遊離したDNA/RNA
(cell-free DNA/RNA; cfTNA)を抽出し、
がん遺伝子パネルOncomine Pan-Cancer Cell-Free Assay
(Thermo Fisher Scientific)を用いて以下の遺伝子に起きている変異を検出します。遺伝子変異の検出結果に加え、検出された遺伝子変異に対する薬剤と日本国内での医薬品の情報をご報告します。
詳細を見る
対象の遺伝子
900以上の変異箇所(ホットスポット、挿入・欠失など)やがん抑制遺伝子を含む全52遺伝子
Hotspot genes (SNVs) and short indels(1塩基変異および短い挿入・欠失)
AKT1, ALK, AR, ARAF, BRAF, CHEK2, CTNNB1, DDR2, EGFR, ERBB2, ERBB3, ESR1, FGFR1, FGFR2, FGFR3, FGFR4, FLT3, GNA11, GNAQ, GNAS, HRAS, IDH1, IDH2, KIT, KRAS, MAP2K1, MAP2K2, MET, MTOR, NRAS, NTRK1, NTRK3, PDGFRA, PIK3CA, RAF1, RET, ROS1, SF3B1, SMAD4, SMO
Tumor suppressor genes(がん抑制遺伝子)
APC, FBXW7, PTEN, TP53
Copy number genes(CNVs,コピー数多型)
CCND1, CCND2, CCND3, CDK4, CDK6, EGFR, ERBB2, FGFR1, FGFR2, FGFR3, MET, MYC
Gene fusions
(融合遺伝子、サンプルが血漿の場合のみ、cfRNAを用いて検出可)
ALK, BRAF, ERG, ETV1, FGFR1, FGFR2, FGFR3, MET, NTRK1, NTRK3, RET, ROS1
METエクソン14スキッピング変異(サンプルが血漿の場合のみ,cfRNAを用いて検出可)
おもな対象がん種
膀胱がん,大腸がん,食道がん,胃がん,頭頚部がん,その他脳・中枢神経系がん,乳がん,子宮頸がん,子宮内膜がん(子宮体がん),卵巣がん,腎がん,肝がん,肺がん,悪性黒色腫,膵がん,前立腺がん,肉腫,甲状腺がん 等
偽陽性の確認について
血漿や血液を用いたリキッドバイオプシーでは、クローン性造血※に由来する変異もがん由来の遺伝子変異と同様に検出される場合があります(偽陽性)。CPMのリキッドバイオプシー検査では、バフィーコートを用いて再度パネル解析を実施することで、検出された変異がクローン性造血に由来する変異であるかどうかを確認しています。それにより、がん由来の遺伝子変異であることを確認することができます。
※クローン性造血:正常な血液細胞の中でも、遺伝子変異を伴い増殖するクローン性造血があることが知られています。
リキッドバイオプシー デジタルPCR
詳細を見る
パネル解析などによりあらかじめ特定した遺伝子変異について、モニタリング等のために簡便かつ高感度に遺伝子変異を検出する検査です。検体(血漿10 mLまたは血液 20 mL)より、がん組織から遊離したDNA(cell-free DNA; cfDNA)を抽出し、デジタルPCR(Droplet Digital PCR)により対象の遺伝子変異の検出頻度をご報告します。(対象の遺伝子変異についてはお問合せください。)
CPMのリキッドバイオプシーの特長
血液を用いたがん遺伝子検査
がんの検診にはさまざまな手法がありますが、CPMではがんの遺伝子変異を確認する検査を行っています。
がんは遺伝子変異によって起こる病気です。遺伝子の情報を正確に知ることは、適切な診断や治療の選択のための重要な手段になります。
品質管理を徹底した国内完結型の解析
- リキッドバイオプシーで扱う血液中のDNAやRNAは、ごく微量で壊れやすいものです。
CPMでは、医療機関での検体の採取・保存方法や輸送条件を丁寧にご案内し、検体受領後は品質管理を徹底して解析を行っています。 - 血液を用いたリキッドバイオプシーでは、クローン性造血由来の偽陽性が検出されることが知られています。CPMでは、偽陽性の可能性を確認するため、必ず確認試験を行っています。
- 検査結果や解析方法に関する医療機関からのご質問等にも学術担当者が適切にご対応します。
検査後のフォローアップのご提案
リキッドバイオプシーで遺伝子変異が見つかった場合のフォローアップ検査や、がん組織を用いたがん遺伝子関連検査(詳細はこちら)など、目的に応じてオプション検査をご用意しています。